いっしょに子育て研究所(こそけん)の理念
子育ては価値ある「仕事」専業のお母さんに理解
育児に対する国や社会のサポートは、昔に比べて改善されたとはいえ、まだま
だ不十分なもの。男女共同参画の意識が広がり、女性の社会的地位を上げるのは
大切なことですが、「社会に出て働いてこそ自立」という考え方は、育児のため
家にいる女性の地位を下げることにもなりかねません。公務員と民間、また会社
によって育児待遇に差があるのも事実。育児は会社勤めと違い、無償で、休憩も
休日もなく、24時間365日拘束される大変な仕事です。いずれ社会に出る人材を
育てるという点でも社会貢献度が高いので、配偶者控除や児童手当以外に、子育
て中の母親に向けた「育児手当」を国が出すくらいの理解が欲しいものですが、
なかなか難しいようです。
持ちたい自信と大らかさ
そんな厳しい状況ですが、赤ちゃんは待ってはくれません。少しでも子育ての
環境を良くするために、まずはお母さん自身や家族の意識を変えてみましょう。
「育児はできて当たり前」という気持ちが潜在的に残り、「仕事と両立している
お母さんは偉い」「子育てで家にいるお母さんは楽をしている」という気持ちを
持ってしまいがちです。
しかし、子どもが小さいときはやはりお母さんがかかわる部分が多く、お母さん
が家にいる意義は大きいと思われます。託児所や祖父母に預けるとしても、母親
と離れる時間が長いと子どもが疲れてしまい、母親側の子に対する愛着形成にも
支障をきたす場合があります。子どもはやはりお母さんが一番。「子どもと一緒
にいるのは良いこと」という自信と大らかさを持つことが大切です。
思いやり、助け合い
社会に取り残された気分になる第一の理由は、自分の収入がないこと。金銭面
はすべてお父さんに頼り、育児疲れ解消のため外出やおしゃれをしようとしても
「養われている」「怠けている」気持ちから解放されることがなく、結局赤ちゃ
んを抱え一人で苦しんでしまうのです。
お父さんや祖父母も、仕事を持つお母さんには「忙しく頑張っている」と理解が
あるようですが、専業のお母さんに対しては「家で育児しかしていない」と、手
伝いにも消極的な傾向が見られます。
子育てとは家庭における役割であり、育児はれっきとした仕事であるという認
識を家族全員が持ちましょう。お母さんが専業子育ての場合も、お父さんは外で、
お母さんは中で「家庭における役割を遂行している」という気持ちがあれば、お
互いに自信を持ち、思いやり、助け合うことにつながります。毎日絶え間なく育
児に取り組むお母さんこそ、家族の手伝いやサポートが必要なのです
ほどほどのお母さん
妊娠中にお父さんと一緒に産婦人科に通い、エコーの画像を見たり、両親教室
に参加したり、出産に立ち会うなどしてもらい、産まれる前の早い段階から父性
を形成することも後々の理解を得る上で有効です。
お母さん自身も完璧を求めてよその家と比べたり、育児書に没頭して悩むのでは
なく、「ほどほどのお母さん」であることがゆとりある子育て環境を作るのです。
子どもを両親が温かく包み、祖父母も過干渉や非協力にならず「ほどほどに見守
り協力する」スタンスで、家族みんなが子育ての大切さ、大変さを理解して、今
しかできない子育てを楽しみましょう。
話/いっしょに子育て研究所所長 Ayumi Shibukawa
文/山陰中央新報りびえ~る(2005.2.13掲載)